幸福論

「あら!主役じゃない〜」




笹上さんの声に視線を向けると
私達より少し遠いところに
青ざめた表情の志乃がいた。


その足は密かに震え
まるで何かに怯えるよう。


でももう遅い。


全部私は見てしまったんだから。



笹上さんに一度頭を下げ
何も言わずに彼女の横を過ぎて
店を後にした。


オフィスに荷物だけ取りに行き
ヒルズを出た。


運よくこの後打ち合わせが入っているため
志乃と顔を合わせずに済む。


足早に歩く私に容赦なく当たる
冷たい風。


今の私にはそれが少し気持ちよかった。


カフェに着くと既に個室の中に
小森くんが座っていた。