幸福論

寒さのせいだと顔を前に戻した時
隣から感じる視線。


見ると志乃が大きな目をさらに大きく開けて
私を見ていた。


バッチリと目が合った彼女は
慌てたように再び前を向いた。




「じゃあまた明日、会社でね。」




駅に着くと別々のホームに降りる。


背を向けようとした時
彼女が私を止めた。





「.........ちょっとだけいい?」




冷え込むこの時期は日が暮れるのも早い。
それでもまだ夕方と言える時間。


頷いて志乃と駅を出た。





「どうしちゃったの?」

「あのね、これ。」




ちょっとした駅前の喫茶店に入り、
差し出されたのは小さなUSBディスク。


仕事関係だろうかと受け取れば
そうではないことは
彼女の表情を見てれば一目瞭然。