ふわっと香った優しい香り。
それは忘れるはずもない。
つい昨日も感じた大好きな匂い。





なんで今?
こんなときに思い出すのも大概にしてほしい。





でもそれは、薄れることなんてなくて。
だんだん強くなるその匂いは
紛れもなく彼のもので。






すぐ隣から感じる香りに、
顔を向けることなんてできるわけもなくて。







訳も分からず固まる私に
ハサミを渡すスタッフも戸惑っていて、






ただ唯一聞き取れたのは








「まこ、今は仕事。」







志乃のその一言だけだった。