高くそびえるビルには大きな看板。

大きく揺らぐ葉っぱはまるで人工物のように青々としていて。

道ゆく人々には笑顔なんてちっともなくて。




六年前、東京に引っ越してきた私は
今年で28歳になった。




私の名前は新藤まこ(しんどう まこ)



東京という地に憧れ続けた中学時代。
修学旅行で訪れたテレビ局にみんなで大騒ぎしたっけ。


大学はこっちで受けるんだと思っていた高校時代。
親の反対であっさり諦めたよね。


就職こそはと東京でしか就活をしなかった。


遮るものは何もなくて、
案外すっきり決まった東京での暮らし。
やっと手に入れた東京での生活。


全てが新鮮だった。


新しい家に新しい家具、家電。
新しい生活にはワクワクの色しか見えなくて。

あの頃は何をしても楽しかったっけ。

今思うと、私の青春はこの六年間に全て詰まっていたんじゃないかな。





「......い。まこ?」

「あ、ごめん。色々思い出してた。」





一つ一つを丁寧に思い出していく。

瞼を持ち上げると、心配そうに眉を下げ、
私の顔を覗き込む人。


思いがけずその目は潤んでいるようで。
そっと握られた手に、また目を閉じた。



これはそんな私の6年間のお話。


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