甘い執事の思うがまま。



ダメだ、容易に津田くんを頼れない。

結局諦めて、唯一ある古典のノートをじっと見つめることしかできなかった。


自分のバカ、ドジ、本当にバカ。
何度も心の中で、そう繰り返していたその時。

ガタッと隣の席が音を立てた。

パッと横を見れば、津田くんが立ち上がり、私のほうへと机をくっつけてきた。


初めて教科書を忘れた日のことを思い出す。
何も言わずに教科書を見せてくれた津田くん。

私が忘れたのに、彼は……。



「教科書、忘れたんで見せてもらいます」

自分が忘れたことにする。
そんなの、ダメなのに。

幸い、古典の先生は忘れ物には優しいから減点はされないけれど、周りからの視線が集まって気まずいはず。