「ね、寝坊じゃないよ……!」
津田くんから視線をそらし、返答するけれど、あからさますぎて絶対不自然だったと思う。
「ふーん」
だけど津田くんは特に何も指摘することなく、いつも通りだったからなんとかバレずに済んだようだ。
「……はぁ」
それから少しして、1時間目の授業が始まる。
古典の授業だったから、教科書を取り出そうとしたけれど。
「……っ」
おかしい。
古典の教科書がない。
必死で探すが、どうやらまた忘れてしまったようで。
どうしよう、古典なのに教科書がないのは絶体絶命のピンチ。
どうして二回も忘れるんだ自分のバカ。
学習能力のない人間。
ひとり落ち込み、津田くんのほうを見ようとした……けれど、ギリギリのところで思いとどまる。



