「……ずるい人」
「そんなこと言って。美紅、嫌じゃないよね」
「……っ、嫌だもん」
恥ずかしいから嫌だ。
拓人だけ余裕があって嫌だ。
「嫌なら抵抗しないと」
そう言ってすぐ、拓人は私を再び抱き寄せた。
離す気はないらしい。
「できないよ」
「どうして？」
「拓人の力が強くて……」
「美紅、本当に嫌なの？」
拓人の優しい声。
だけどその言葉は意地悪だ。
「……恥ずかしくて嫌だ、私ばっかりドキドキして嫌だもん」
どうだ、言ってやった。
意地悪な拓人に対して言い返せた自分に少し満足していたら、途端に彼は抱きしめる力を強めた。
「た、拓人？」
「何それ。今の言葉、全部本当？」
「拓人……？」
「嘘はついていない？」
拓人の様子が変わる。
おかしい、言い返したはずなのに、どうして拓人は嬉しそうな声をしているの？
