甘い執事の思うがまま。



熱い顔。
ドキドキするし、恥ずかしい。

じっと拓人を見上げれば、彼はもう一度優しく笑った。


ああ、これがキス。
こんなにもドキドキするものなんだって。



「お嬢様、初めてにしては上出来です」
「ほ、本当……?」

「はい。ですが、まだ触れるだけのものです。
これからは毎日、息の仕方とか、ゆっくり学んでいきましょう」

「ま、毎日!?」


まさかの言葉に驚きを隠せなくて、じっと拓人を見つめる。


「もちろん、毎日でございます」
「そこまでして、“恋人”について学ぶ必要あるの?」

「お嬢様の将来のため」
「えっ……」

「お嬢様は将来、お嬢様に相応しいお相手と結婚するはずです。

きっと、お嬢様のご両親が決めることでしょう」


結婚相手は、親が決める。
それは中学の時から、なんとなく予想していた。

だってほとんどの人が、“結婚相手は親同士が決める”って言っていたから。