「ま、待って……」
慌てて言葉を制したけれど、拓人は止まらない。
執事の拓人は、ほとんど私に触れてこないのに。
突然顎に手を添えられ、そっと持ち上げられた。
顔が背けられなくなる。
視界に映るのは、拓人の綺麗な顔。
「た、拓人」
「キスする前は、ちゃんと口を閉じてください」
「キスする必要なんて」
「お嬢様、大丈夫です。私を信じてください」
ふわっと、優しく笑う拓人はいつも通り。
だからこそ、信じるべきなのかもって思ってしまう。
「キスの勉強は、大事?」
「もちろんでございます。前々から思っておりましたが、新しい学校生活に慣れた今がタイミングとして良いかと」
そんな前から……それに、私に気を遣ってくれていたんだ。



