「いいえ、お嬢様。知識を学ぶのではありません、キスは経験して学ぶものです」
「ということは、つまり……」
「そのキスの相手を私がやらせていただきます」
ようやく理解した私。
拓人と、キスをする?
あまりに突然のことで、固まってしまい、言葉が出なくなる。
「お嬢様?」
拓人に声をかけられ、目を見張ったまま彼を見つめるけれど。
拓人の様子はいつもと変わらず冷静だった。
「あ、あの……えっ、ど、どうして?」
終いには困惑してしまい、間抜けな声が出てしまう。
「……お嬢様は、何も知らなさすぎます。
恋愛の知識もない、純粋なお人です。
だから、もっと学ぶべきなのです。
“恋人”とは、どのようなものか」
「でも、キスなんて……」
「まず、キスをする時は目を閉じるのが基本です」
まだためらう私に対し、拓人は話を進めてしまう。



