「え、ちょ、美紅」
「そ、そうだった!今日は拓人のお母さんに作ってもらってたから、すっかり忘れてたよ!
あは、あはは……ありがとね!」
楓ちゃんが隣で困惑したように、私の名前を呼びかけたから慌てて嘘を口にした。
我ながら、咄嗟の嘘にしては上出来だと思いつつ。
「……どういたしまして。俺の親も、美紅の好きなもの入れといたって言ってたよ」
そしたら拓人も嘘に合わせてくれたおかげで、なんとか乗り切ることができた。
「本当?嬉しいなぁ。
これで今日の授業頑張れるや」
「今日じゃなくて、いつも頑張るんだよ?」
「もちろんだよ」
私が笑顔で答えれば、拓人も優しく笑い返してくれて。
そして最後に、私の頭をぽんぽんとしてから帰っていった。



