ベッドに腰をおろし、そばには拓人が立った状態でその時が来るのを待つ。

時計の秒針が進むたび、息苦しさが増す。


「……お嬢様」
「っ、どうしたの?」

気まずい空気が流れる中、それを破るかのように拓人が口を開いた。


「最後にひとつ、わがままを言ってもよろしいでしょうか」

「わがまま…それは何?」


また少し期待を抱くけれど。
“最後にひとつ”という言葉に胸が痛むのがわかった。


「もう一度だけキス、させてください」
「……っ」

ここに来て拓人は何を言い出すのだ。
なんて、だいたい想像はついていたけれど。


「俺って結構、諦めが悪いみたいです」

一人称が“俺”。
つまり今の拓人は“男の姿”である。