きっと拓人はそれをわかっている。
だからこのような状況になることを受け入れていたのだ。
今も私のそばに拓人がいるけれど、彼の表情が変わることはない。
「今週末、その相手と会うことになっている。
きちんと準備しておきなさい」
「……はい」
声が震えるのを必死で抑え、返事をした後はすぐ部屋へと戻る。
もちろん拓人をおいて。
部屋に入るなりベッドにダイブし、込み上げる涙を隠すように枕に顔を埋めた。
「……お嬢様」
そしていつのまにか部屋に来ていた拓人に呼ばれる。
それも切なげな声で。
「……苦しい、苦しいよ拓人」
嫌だ、このまま誰のものにもなりたくない。
どうせなら拓人と出会わないほうが良かった?



