「美紅、美紅は親に決められた婚約者と結ばれるんだよ」
「やだ、絶対に嫌…断るもん」
「親を裏切るようなこと、したらダメ」
「それなら拓人とふたりで逃げる」
「美紅。お願いだからこれ以上惑わさないで」
惑わす?
惑わすって…?
「いつか離れるからこそ、今この瞬間を大切にしたいんだ。恋人関係じゃなくなっても、俺は執事としてずっと美紅を守り続けるよ」
「恋人としては守ってくれないの?」
「そんな贅沢な願い、叶わないよ」
切なげな表情をしながら、拓人に額をくっつけられる。
私だけがわがままなんだ。
拓人は将来を見据えている。
さらに受け入れようとしているのだ。
「じゃあ私も諦めないとダメ…?」
「諦めてくれないと逆に困るよ」
「それでも私は拓人と……んっ」
そこまで言いかけた時、拓人にそっと唇を重ねられた。



