「美紅が忘れてたから」
「忘れるも何も、昔と違ってて…」
「俺は覚えてたよ、ずっと美紅のこと」
にこにこ笑って、今度は私の頭を撫でる。
やけに上機嫌な拓人。
「じゃあ、あの日の約束をずっと覚えてたの…?」
「約束?」
「一生私のそばから離れないって」
「……美紅がそれを望むなら」
「望む!私は拓人と離れたくない」
やった、まるで奇跡が起こったかのようである。
さっきまでは私に婚約者が決まると、専属執事ではなくなるって言っていたのに。
今はそばにいてくれるって、離れないって。
「美紅、俺のこと好きなの?」
「……っ、うん…」
「何もうかわいいね、あんなに好き好き連呼して」
「だって拓人が離れていきそうで…」
今となっては恥ずかしいことだ。
何度も訴えるように好きと言っていたのだから。



