「美紅、行こう」


そして、呼び方も変わる。
“お嬢様”から“美紅”へと。

正直、“美紅”と呼ばれたほうが私は嬉しかった。


距離が近い気がして。
執事とお嬢様って、なんだか身分違いで嫌だ。



「うん!」

拓人が手を差し伸べてきたから、私は迷わずその手をとり。

ここはまだ家なのに、手をつないで行く。


これも、もう慣れた。
拓人の手は、私なんかよりずっと大きくてしっかりしている。


行き帰りは車で送迎されるのだが、リムジン……ではなく。

目立たないよう、わざわざ普通車を買ってもらった。


「美紅、腰とか痛くならない?」
「心配しすぎだよ」


乗るたびに、拓人は私の心配をしてくれる。

普通車だからって、そこまで乗り心地が悪いわけではない。