「やっぱそんな反応すると思った」
「……へ」
「これは使われてない教室の鍵だよ」
「使われてない教室…どうして拓人が持ってるの?」
「友達が部活のミーティングで空き教室を使う予定だったけど、場所変更になったらしくてもらったんだ」
何故だか嬉しそうに笑う拓人。
どうして嬉しいんだろうと、すぐには理解できなかったけれど。
「美紅、今からふたりきりになれるんだよ」
「ふたり…きり」
「そう、ふたりきり」
「え、やった…!」
ようやく意味がわかり、思わず笑みが溢れる。
だって周りに人がいるとなれば、それなりに気を遣わなければならない。
本物の恋人に思われるように、だ。
けれど私たちは本物の恋人なんかじゃなくて───



