甘い執事の思うがまま。




すると私が座るなり、拓人に後ろから抱きしめられてしまった。


「……っ」
「まだ怖いですか?」

きっと拓人はわかっているのだ。
私が今何を思っているかだなんて。


「思い出すと、怖くてっ…今日は楽しかったはずなのに……」

楓ちゃんとの楽しい思い出より、最後が勝ってしまった。


「男の人にまったく力が敵わなくて、もしあのまま拓人が助けてくれなかったらって思うと…」


怖い。
拓人がいなかったら、私はどうなっていたのだろうか。


「きっとどこかへ連れ去られて、お嬢様は酷い目にあっていたことでしょう。

見た目からしてお嬢様は男に狙われやすい、だから容易に外に出て欲しくないのです」


「……ごめん、なさっ…拓人」


心配してくれている拓人を裏切ったようなものだ。
謝るだけじゃ済まされない。