「……いらない」
それでも少しは期待していた。
何も言わずに私のそばにいてくれるんじゃないかって。
それは甘い考えに過ぎないというのに。
「お嬢様、食べないのはいけません」
「……っ、いらないもん」
拓人は何も悪くないというのに、拒否してしまう。
食欲がないからってわがままになってしまう。
このままじゃないと本当に拓人が私に呆れて離れていくんじゃないか。
怖くなった私は思わず顔を上げ、謝ろうとしたけれど───
「では本日はここで食べることにしましょう」
「えっ…」
「いくら食欲がなくても、何か食べたくてはお体に障ってしまいます。軽いものを用意させましたので」
優しく微笑む拓人。



