拓人が少し目を見張り、私をじっと見つめる。
「あ、いや……今のは聞かなかったことに」
自分で言っといて、たまらなく恥ずかしくなる。
熱い顔を隠すように俯くけれど、拓人は熱くなった頬に触れてきた。
「熱いな」
「……っ、拓人」
「今の俺はとっても悪い男だよ。
だから美紅が嫌だって言っても、キスはやめてあげない」
拓人が笑う。
色っぽいその笑みに、胸がドキドキうるさくなった。
拓人は私をドキドキさせる天才だ。
いつもなら何かを返す私だけれど、この時ばかりはじっと拓人を見つめることしかできなくて。
それを肯定と受け取った彼が、優しいキスを落とす。
さらに拓人はキスをしたまま、ゆっくりと押し倒してきた。
さっきと同じ体勢。
押し倒された状態でのキスは、さらに逃げるのが不可能になる。
「もっと、俺を欲しがって」
小さく笑ってそう言った拓人は、また私の唇を何度も奪ってきた。



