「キスしても、許さないもん」
「厳しいな」
キスして許すだなんて、なんか嫌だ。
軽い女って思われてしまう。
「じゃあ、キスしなかったら?」
「どっちでも許さないもんね」
「してもしなくても許してくれないなら、キスしたほうが得するね」
「……っ」
含みのある笑い。
もしかしたら、私の本音がバレているのかもしれない。
拓人にキスしてほしい、ということを。
「やっぱりキスしなかったら許すことにする…」
「じゃあ許さなくていいからキスするね」
「そ、そんな……ずるい」
結局キスをするだなんて、許さないと言った意味がない。
「だって今の俺、悪い男だから。
美紅がそれを選んだんだよ?」
勝ち誇ったように笑い、拓人が私にキスをする。
何も言い返せない。
今、目の前にいるずるい拓人は私が望んだ彼。
「悪い、人なら……もっと、キスする……?」
自分が何を言っているのか。
わかってはいるけれど、止められないから不思議だ。



