「最悪クビになるかもしれないね。
それでもいいと思えるくらい、美紅はかわいいからなあ。いつも攫いたくなる」
「だ、ダメ!」
拓人は何気なく言ったのだろうけれど、私は慌てて拒否をする。
「美紅?」
「拓人、ダメ。クビなんてダメ、やめたらダメ。
辞めてもいいなんて思わないで、これは主の命令。絶対に辞めちゃダメ」
拓人がいなくなってしまえば、私はこれからどうすればいいのかわからない。
「美紅、今の俺は執事じゃないよ」
「じゃあお願い、やめるなんて思わないで…」
「ほら、泣かない。
ごめんね、意地悪しすぎたね」
「じゃ、辞めない……?」
「辞めないよ、ずっとそばにいるってさっきから言ってるよね」
うん、言っているけれど。
拓人がそんなことを言うから不安になるのだ。
「バカ、拓人のバカ」
「今度は拗ねない」
拓人もベッドの上に座り、私の頭に手を置いた。
「拗ねる……拓人が、悪い」
「機嫌取らないとね。どうしようか。
キスで許してくれる?」
「……っ」
熱くなる顔。
ずるい、その聞き方。
また私に選ばせようとしているんだ。



