無駄なものは何一つなく、シンプルなベッドが部屋の真ん中に置かれ、勉強用の机にクローゼットがあるだけ。
「物、少ないね」
「基本、寝るだけの部屋だから」
「そっか……この部屋で、狭くない?」
「十分すぎるくらいの広さだよ」
拓人がそう言うから、別に変えてもらう必要はないのかなって思った。
もし狭いなら、お父さんに頼んで拓人の部屋を変えてもらおうと思ったから。
「じゃあ美紅、おろすよ」
「うん」
拓人はそっと、私をベッドの上へとおろす。
「あーあ、こんなかわいい子を攫ってしまったから、後でバチが当たるかな」
「か、かわいくないからバチなんて当たらないよ……!」
さっきもそうだったけれど、拓人は私のことをかわいいと言い過ぎだ。
さすがの私も、嘘のように何度も言われてしまえばへこんでしまう。



