「じゃあ攫ってしまおうか、俺のかわいい美紅」
優しい声音が、私に安心感を与え。
大人しく拓人に抱きかかえられる。
「これ、バレたら怒られる?」
「もうみんな寝てるから大丈夫」
「でも、夜の警備の人とか…」
「バレたら朝にでも口止めしておくよ」
口止め、できるの?
不安な私に対し、拓人は自信ありげ。
お父さんにバレてしまうと、拓人が執事をクビになってしまう。
私にはそれが怖いのだ。
「大丈夫、怖がる必要はないよ」
「ほんと……?拓人、いなくならない?」
「ずっと美紅のそばにいるから」
だけど、拓人の言葉を信じようと思い、私は彼にしがみついた。
そして連れてこられたのは、私が来たことのない部屋。
「ここは、拓人の部屋?」
「そうだよ、俺の部屋」
初めてくる、拓人の部屋だ。



