「お嬢様」
だけど拓人はやめてしまう。
キスは1日に一回、というのが基本だからだろうか。
それなら、その基本を変えてほしい……なんて思う今の私はきっとおかしい。
「日が経つごとに、お嬢様の色気が増していらっしゃる。一体、何をお考えですか?」
「……っ」
色気が増すってそんなこと、言わないでほしい。
もちろんそんなつもりなんてないから恥ずかしくなるのだ。
「な、なんでもない…」
「そうですか。それでは、もうそろそろ寝ましょうか」
「えっ、もう……?」
こんなあっさり終わるだなんて思っていなかったから、戸惑ってしまう。
まだ拓人から逃げられてないし、キスだって───
ここに来てはっと我に返った私。
だから私は、何を考えているんだって。
「お嬢様、今日のお勉強はここまでです。
これ以上は明日にしましょう」
「明日……」
明日、が私には長い。
だけど拓人は私を抱きかかえ、枕元に私の頭がくるようおろした。
そして毛布をかけ、優しく笑う。
「それではお嬢様、お眠りください」
「……うん」
寂しい。
これで終わりだなんて。
だけどこれが普通で、いつも通りなのだ。
私はそう自分に言い聞かせ、目をゆっくりと閉じた。



