「どうやらわかっておられないのですね」
「え?」
その時。
ぐらっと視界が揺れた。
背中には柔らかなベッドの感触。
嫌な予感がした時には、もう拓人が目の前にいて。
「た、拓人、今から筋トレ…」
「やはりそのように考えておいででしたか」
「え……違うの?」
「お嬢様、先ほどの話の続きを致しましょう」
この状況で冷静に話せることのほうがおかしい。
視線をそらし、ドキドキする胸の高鳴りを抑えようと、必死で別のことを考えようと心がける。
「ダメ……」
「夜に体を動かすといえば、ひとつしかないはずでは?」
「き、筋トレだと思うもん」
「それではなおさら危険です。これでまた賢くなりましたね、お嬢様」
そんな呑気なことを言っている場合じゃない。
私は首を何度も横に振って、拓人の胸元を押し返す。



