甘い執事の思うがまま。





もう半分以上が夢の中へと入ったその時、突然温もりが離れてしまった。


思わず目を開け、その温もりに手を伸ばす。


背中には柔らかな感触。
きっとベッドの上なのだろう、天井も視界に映ったけれど、それどころじゃない。


「美紅?」

少し驚いたような、拓人の姿。
綺麗な顔が振り返って私を見つめていた。



「ダメ」
「え?」

「離れたらダメ」


首を小さく横に振る。
温もりが離れた途端、寂しくなって眠れなくなってしまった。


「どうしたの?美紅」

明らかにいつもの私と違うからだろう、拓人が不思議そうに聞いてきたけれど。


私だってわからない。
寝ぼけているのかもしれない。

頭がうまく回らないから。


「私が寝るまでそばにいてほしいの」

温もりを離すまいと、拓人のシャツを思った以上にきつく掴んでいた。

半ば強引に、引っ張るかのように。



「いつも、夜は私が寝るまでそばにいてくれるのに……どうして今日は、行こうとするの?」


困らせるだけだってわかっているけれど、抑えが効かない。