「このお行儀の悪い唇を、塞いで黙らせただけですので」


拓人の指が、私の唇に添えられて。
色っぽく笑う。

そんな拓人から、思わず私は視線を外した。


ずるい、ずるい。


そんなうまいこと言って、また私にキスしようとしてくるんだ。


「お嬢様、ご自身が悪いことをしたと認めてはいかがですか?」

私は絶対に悪くない。
悪いのは、拓人。

何回もキスしてきて、私をドキドキさせる。
そんな拓人が一番悪くて、ずるいというのに。


拓人は私のせいにしてくる。


認めたくない。
本当は認めたくないけれど、抗えない。


「……っ、ごめ、なさい…」

諦めて、素直に謝る。
本当は悪いなんて思っていない。

拓人が悪いって思っているけれど、逆らえないのだからこうするしかなかった。