だんだんと近づく拓人との距離。
拓人がベッドに手をつき、前傾姿勢へと変わる。
まだ何もされていないし、キスされると決まったわけじゃないけれど。
反射的に俯き、拓人から顔を背けるが、私の胸は相変わらずドキドキしていた。
「顔、上げてください」
どこか甘さの含まれた声が、私を優しく誘う。
騙されたらダメ。
だって拓人は、すぐ目の前にいる。
俯いていても視線を感じ、拓人の存在が確認できるほど。
拓人は私をじっと見つめていた。
顔を上げればもう逃げられないから。
「寝るの。拓人はもう部屋に戻って」
「それはできません」
「……っ、どうして」
「お嬢様が眠るまで、私はお側におります」
それは、確かに嬉しい言葉。
静かな部屋にひとり、寝るのは寂しいし苦手。
よく拓人が来る前まで我慢していたと思う。



