「意味なんてないもん……拓人のキスは、同じだもん」
「まったく別物です」
「拓人はひとりだけだもん」
首を横に振り、拓人を拒否する。
これ以上ドキドキすれば、心臓がおかしくなってしまいそうで。
「お嬢様」
だけど拓人は、少しきつめに私の名前を呼ぶ。
もう逃げられないという合図でもあった。
「どうしてそう焦らし続けるのですか。
逆効果だと何度言えば」
「じ、焦らしてない!拒否してるの!」
拓人の言葉を遮るように、負けじと私も少しきつめに言葉を放った。
このままじゃ、私はきっと拓人にキスをされてしまう。
だけどもちろん、私が拓人から逃げられるはずもなく。
「……そうやって、拒否する反応を楽しむ男もいるのですよ」
ゆっくりと、影が近づいてくる。



