だから私がいつまでも起きていれば、拓人の時間がなくなってしまう。
わかっているけれど、拓人に見合う女の子にならないとっていう気持ちが勝ってしまったのだ。
「……拓人、ごめんね」
「どうして謝るのですか」
「だって私のせいで、拓人の時間減っちゃうでしょ?」
今日はいつもよりさらに寝るのが遅い。
拓人は拓人でやらないといけないことがあるはずなのに。
「お嬢様のせいなんかじゃありません。
それに、誤解しておられます」
「誤解…?」
薄暗い部屋は、オレンジ色に光る常夜灯だけが視界を確保する唯一のもので。
暗闇から見える拓人の表情は、やっぱり穏やかで優しいものだった。



