「本当にいい子だね」
「いい子なのは拓人だよ」
少し意地悪なところもあるけれど、正義感とかそういう真面目な感情が人一倍ある気がした。
「俺?俺がいい子なの?」
「うん、すごく真面目」
「どうかなぁ。裏では不真面目だったりして」
「え……」
「案外悪い子だったらどうする?」
「悪い子なの?」
拓人は相変わらず穏やかな表情だったから、嘘か本当かわからない。
「さあ、どうでしょうか」
「あ、はぐらかした」
「美紅が決めればいいよ」
「いい子か悪い子か?」
「うん、そう」
「じゃあ拓人はいい子!」
手を伸ばし、拓人の頭を撫でてみる。
黒い髪はサラサラとしていた。
「いい子かぁ、じゃあこれからもいい子でいないとね」
拓人は嬉しそうに笑う。
その笑顔に私もつられて笑った。
拓人は意識しなくても、素が優しくて温かい人なんだけどな……と思いながら。



