私は何度も首を横に振れば、拓人は笑った。
「でも美紅、さっき嘘ついたよね」
「うっ……」
「そのふたりと一緒にいるからじゃないかって、誤解して当然じゃないかな?」
それも、意地悪そうな笑み。
きっと拓人は、ふたりが悪影響だなんて思っていない。
多分、別に目的があるのだ。
「……拓人、ごめんなさい。
嘘ついてごめんなさい」
「嘘に対して謝るだけ?」
「ううん、違う」
拓人がほしいのは、謝罪の言葉。
それから……。
「もう、嘘はつかないから」
反省の言葉。
恐らくこのふたつ。
確かに私は嘘をついてしまった。
それはとても悪いことだから、素直に謝る私。
「約束、できる?」
「うん。約束する」
「……美紅、よくできました。悪いことを認めて反省するのは、簡単なことじゃないからすごいよ」
よしよしと頭を撫でられるけれど。
すごいはずがない。
だって私は、嘘をつくという悪いことをした。
だからすごいのは、すぐに嘘だと見破り、悪いことだと反省させる拓人の能力の高さだろう。



