「キス、していいから……」
「俺との約束忘れた美紅が悪いのに、そんな上から言っていいの?」
頑張って言ったのに。
心臓の音もうるさくて、顔も熱いのに。
「拓人」
「どうしたの?」
優しい顔して、優しい声音で。
それなのに、やってることは意地悪。
「拓人との約束、忘れちゃってごめんなさい…」
「うん、それから?」
「それから……あの、その」
「美紅、何も責めてるわけじゃないよ。
ゆっくりでいいから、頑張って言おうね」
ずるい、ずるすぎる。
拓人は私に言わせたいだけなのに、そんな風に優しく落ち着かせようとしてきて。
「……っ、私が悪いから、罰として……キス、してください……」
穴があったら入りたいとは、まさにこのこと。
どうせなら気絶したいくらいに恥ずかしくなる。



