「もちろんだよ。
恋人のフリだもんね、頑張って演じきろう」
そんな律儀な彼に、私はすっかり心を許していて。
「感謝致します、お嬢様。
本当に噂通り、優しい方ですね」
「私が?そんなことないよ。
拓人のほうが優しい人だと思う」
「私はそんな優しい人間じゃありません」
「絶対嘘だ」
男の人が苦手なのに、私は拓人に心を許せたのだ。
つまり、私の苦手意識がなくなるくらい、拓人には惹かれるものがあった。
「本当です、お嬢様。
なのであまり期待なさらず」
そんなこと言われても、やっぱり彼が優しくないだなんて考えられなくて。
今日からきた私の専属執事の彼は、本当に素敵な人だと思った。
そんな彼になら、きっと安心できる。
そう思った私の胸のうちは、安心感でいっぱいだった。