「……そんなの、嘘だ」
「本当だよ。まだ美紅とキスしたい」
「だ、ダメ」
「うん。だから我慢してるんだよ俺」
我慢って……拓人、どうしてそんなにもキスしたいんだろう。
「拓人は、キスがしたいの?」
相手は女の子なら、誰でもいい?
ふとそう思い、同時に不安が襲う。
拓人を好きになる女の子は、きっと多い。
だってこんなにも優しくて、まっすぐで完璧な人だ。
じゃあ拓人は私じゃなくても……いいんじゃないかって。
気になって顔を上げると、私の行動に驚いたのか、拓人が一瞬目を見張った。
かと思えばすぐ優しい笑顔を浮かべる。
「どうしたの?
不安な顔、してる」
「拓人、質問に答えて……」
もし、私じゃなくてもいいのなら。
少し悲しい。
どうしてだろう。
だけど、誰でもいいのにキスされるのは、虚しいと思った。



