「ほら、顔上げて?」
「やだ」
「ダーメ」
そんな甘く、優しい声でダメだと言われたら、顔を上げたほうがいいんじゃないかなって思ってしまう。
だけど、無理なものは無理だ。
恥ずかしくて心臓が本当に壊れてしまいそうになる。
それなのに拓人は、私の腰に手を添えてきて。
優しい手つきだったけれど、ビクッと体が跳ねる。
「顔を上げるだけでいいから」
「やだ、上げたらキスするもん」
「勉強内容、忘れちゃった?
焦らしたら男は燃えるって。
それとも……無理矢理されたいの?」
「……っ」
ずるい、そんなことを言うだなんてずるいすぎる。
やっぱり普段の拓人は意地悪だ。
そんなこと言って、あえて選択の余地を与え、自分の意思で顔を上げさせるんだ。



