「これぐらいで?」
そして意地悪な物言い。
拓人の楽しそうな声が、耳に届く。
いつもなら。
執事の拓人なら、優しいのに。
恋人関係の拓人は、意地悪さが増してしまう。
「かわいいね、余裕のないその表情。
美紅は俺でいっぱいになればいいよ」
私の顔を覗き込むようにして見つめてくる。
色っぽい視線に、鼓動は速くなるばかり。
私の知らない拓人が目の前にはいた。
「その表情も全部、俺のものだから」
ようやく手首を離してくれた拓人。
だけど今度は、その手で頬を撫でられる。
「……熱いね」
「……っ」
時間が経つにつれ、全身を駆け巡る熱のせいで思考が鈍くなる。
ただじっと動かず、拓人を見つめることしかできない。



