甘い執事の思うがまま。




今の言い方。
まるで、拓人も初めて飲むというような感じだった。

それに、みんなの知るって言い方も、どこか引っかかる。


「拓人も飲んだことないの?こういうの」
「家が厳しかったから」

「そっか……そういえば、拓人の家族は今どこにいるの?」


一度頭の中で引っかかると、どんどん溢れていく疑問。


拓人が専属執事になり、もうすぐで3ヶ月が経つというのに私……拓人がここに来る前は何をしていたのかすら、聞いていないことに気がついた。

なんで私、今まで何も疑問を持たずに拓人と過ごしていたのだろう。


拓人のことを知りたいと思っていたくせに、重要なことは何一つ知っていなかった。


「家族は今、家で普通に過ごしているよ」

「家族と離れて寂しくないの?
どうして執事になったの?」


「寂しくないよ。だって美紅がいるから。
それに執事になったのも……約束したから」

「約束?」


約束って、執事になるって誰かに約束したの?