そうだ!
今ここで津田くんと話している場合じゃないんだった!
私は慌てて振り向くと、拓人が笑って立っていた……けれど。
なぜか怖いと思うほど拓人の笑みは綺麗で、少しだけゾッとした。
見本になるような笑み。
まるで、作っているかのような。
「美紅?」
「……あっ、うん、今すぐ行く!」
もう一度、名前を呼ばれ、私は慌てて靴を履き替えた。
「じゃあね、津田くん!」
「……榊原」
「バイバイ!」
「榊原」
背中を向けようとしたら、なぜか津田くんに腕を掴まれてしまった。
「どうしたの?」
「お前、本当にあいつ大丈夫なのか?」
「あいつ……?」
「あの先輩。不安でしかないんだけど」
「え?拓人はすごく優しくて、私にはもったいないくらいだよ!」
もちろん私は本心だったから笑顔で答える。



