「あの、お嬢様……?」
さすがの彼も、不思議そうに私を見つめてきて、慌てて我に返る。
「あっ、いや、その……よろしくお願いします!」
見惚れていた自分に気がつき、恥ずかしさを隠すようにして勢いよく頭を下げる私。
「お嬢様、やめてください。
執事相手に頭を下げるだなんて、よからぬ行為です」
すると彼が近づいてきて、私の肩にそっと手を置いた。
思わず顔を上げると、やっぱり息を呑むほどの綺麗な顔がそこにはあった。
「で、でも、あの……」
「どうか、敬語もやめてください」
彼はそう言って笑う。
優しい笑みに、ふと体の力が抜けた気がした。
「わ、わかった……けど、なんて呼べばいい?」
「お嬢様の好きなように呼んでいただけたらと思います」
好きなようにって言われても。
「じゃあ、神崎さん?」
「それはいけません」
「えっ……」
好きなように呼んでいいと言ったのは彼だというのに。



