「そうやってお嬢様は無意識に男を喜ばせるのですね」
「んー?なんか言った?」

ぼそっと拓人が何やら呟いた気がして、聞き返す。
だが拓人は首を横に振り、優しい笑みを浮かべた。


「なんでもありません。
本日の朝食は、いかが致しましょう」

「今日もパンがいいな」
「かしこまりました」


私が初めてパンが食べたいと言って以来、拓人はこうして毎日朝の気分を聞いてくれるのだ。

ご飯が食べたい時もあれば、パンが食べたい時もある。


そんなわがまま、きっと迷惑だろうと思い、今まで言ってこなかったけれど、拓人は『気にしないでください』と言い、こうして確認してくれる。


「ではお嬢様、着替えが終わりましたら外に出てきてください」

「うん、わかった」


そしていつものように拓人は部屋を出て、私は制服に着替えた。