どうしてそんな悲しそうな顔をするの?
じっと拓人を見つめていると、彼の手は大胆にも私の頬へと移動した。
いつもならキスの合図だけれど、もうキスの勉強は終わった。
だから他に意図があるはずだ。
「それでは、これはどうでしょう」
「これ……?」
首を傾げて拓人を見れば、もう悲しい顔をした彼はいなかった。
いつもみたいに優しい笑みを浮かべている。
「家でデートするのです。設定は、そうですね……テストも近いことですし、勉強会ということで」
「あっ、楓ちゃんが言ってたやつだ」
“お家デート”に“勉強会”。
まさに楓ちゃんの思い浮かべていたことを、拓人は提案してきたのだ。
つまり、恋人で“お家デート”と“勉強会”はよくあることなのだろうか。



