「お嬢様は嫌なのですか?」
「え……」

「好きでもない私と、キスするのは」


珍しく、拓人から私を離してきて。
じっと真剣な瞳で見つめられた。



「私は……私は」

どうなんだろう。

私だって拓人は“頼りになる専属執事”なだけであって、互いが好きな人同士ではない。


それなのに、毎日拓人とキスをしている。


「勉強、だからなのかな……抵抗はないや」

嫌とは思わない。
そもそも恥ずかしくて、ドキドキしてしまうほどなのだ。


「私もお嬢様と同じです」
「同じ?」

「はい。お嬢様の勉強のため。
それに貢献できているのなら嬉しい限りです」


そう言って拓人は本当に嬉しそうに笑うから、嫌ではないのかな、と思った。