それは、小さい頃の記憶だった。


「か、返して……!」
「へへっ、悔しかったら取ってみろよ!」


私立の小学校に通う私は、4年生の時に同じクラスだった男の子によく意地悪されていて。


先生や親に相談しても、『向こうの方が上だから』と私には理解し難い言葉を言われ、何も対処してくれなかった。


今回は4年生として最後の日だというのに、帰りの会にその男の子に筆箱を取られ、放課後になっても返してくれなかった。



そのため、頑張って男の子を追いかけるけれど、足も遅い私が追いつけるはずもなく。


「きゃっ……」

さらにドジな私は、何もないところでつまずいてしまった。


もちろん転んでしまった私は、じわりと涙が浮かんできて。

涙腺が決壊し、ぽろぽろと涙が溢れてしまったその時。


「美紅ちゃん!」


誰かが私に声をかけてくれた。

涙で視界が歪む中、顔を上げれば、ひとりの男の子が私に駆け寄ってきて。