思いは海の底に沈む【完】

きっと柊さん、乙羽さんの事が好きすぎて似合わない人に着せたくないんだ。だったらこんな条件出さなきゃいいのに




カツラを被って脱衣場を出た





「湊、遅いですよ…」

『どう?女の子に見える?』

「は、はい…。メイクしますから座ってください」

『うん。柊さん、どうせなら乙羽さんに似た感じにしたらテンション上がったんじゃないの?』

「は!?何でですか?それじゃ意味がありません」

『ま、柊さんの好みに合わせてるだろうから何でも良いけどね。
俺は本当に付き合うことは出来ないし柊さんが今日楽しめればそれでいいよ』

「湊は楽しまないんですか?」

『ふっ、あははっ。俺が?こんな格好させられて?何を楽しむと言うの?』

「少し動いていいですけど、流石に笑わないでください」





柊さんは器用にメイクをしていく





『ねぇ、もしかして柊さん緑川さんと同じ系列?もうすぐ工事するとか?メイクしてるでしょ?』

「バッ、アナタ、冗談で言っていいことと悪いことがありますよ」

『だってこんなに上手いんだもん。やっぱりこっそり練習してるでしょ?』

「しません!お嬢様の為に習得しただけです。出来ました」

『ん』





揺れるスカート

髪は綺麗に纏められていた


鏡で見る俺は別人で誰も昨日テレビで犯人を華麗に捕まえていた新米刑事と同一人物だと思わないだろう




『ふっ、笑っちゃうよね。こんなに変われたら俺明日から堂々と街歩ける』

「いいえ、笑えないほど綺麗ですよ。湊」


やだなぁ。こんな歯の浮くような台詞を言われる日が来るとは思わなかったな。


柊さんから手を差し出される

手を乗せて歩き出す



まるで、お伽噺だな