思いは海の底に沈む【完】

「ゆっくり見てて、お茶淹れてくるわね」

『その前にタオルで頭拭いてくださいね』




店内はセレブ向けとあって落ち着いた雰囲気だった



ジュエリーや化粧品まで取り扱ってる





ドレスが1着1着、展示されて見やすくなってる


どれも素敵だけど赤いドレスに釘付けになった






「あ、ルージュ、気に入った?」

『もー、乙羽さん、髪濡れてるじゃないですか!』



ポケットからハンカチを取り出して差し出す



『なんか、1着だけオーラが違いますよね。ルージュっていうドレスなんですか?』

「そうよ。赤いドレスの事をルージュって呼んでるの。
他の色も名前を付けているわ
青いのはブルームーン」

『へぇ~。確かにその青いドレスは青地に黄色いスパンコールをあしらってて夜空っぽいですね』

「元々、私はパステルカラーしか作れなかったの。パステルカラーしかイメージが沸かなかった」

『確かに乙羽さんは優しそうだからパステルカラーがお似合いです。』

「でしょ、ビビッドカラーの物は私が作ってもイマイチ。そんなときに人生の転機が訪れたのよ」

『人生の転機?』

「恋を、したの。湊くんと同じくらいの歳に
それから、嫉妬したりときめいたりしてアイデアが動き出したのよね
ルージュは私の恋なのよ」






乙羽さんは今も恋をしている顔だ
乙羽さんは愛しそうに裾を抱き締めた


きっと、その人とは長く続いてるんだろうな。そう思った