思いは海の底に沈む【完】

その夕方だった




緑川さんが他の子のマネージャーに呼ばれたので帽子とメガネをかけて外に出た



雨が降っていた。傘をさすからバレる心配はない。好都合だった



途中、ショーウィンドウにドレスが展示されてて魅入ってしまった




「ありがとうございました。って湊くんじゃない?」

『…あ、乙羽さん、こんにちは。ここ、乙羽さんのブランドだったんですね』

「良かったら上がって!お茶をご馳走するわ」

『いや、俺はドレスが綺麗だったからついつい見てただけですよ』

「~~~!中に入って着てもいいのよ!」

『イヤ、ヤメトキマス』



立ち去ろうとすると乙羽さんが慌てて手を掴む

傘もさしてないのに濡れてしまう

乙羽さんの方に差し出すともう片方の手で俺方面に戻された






「嘘嘘!見てくだけでいいから!」

『乙羽さん、濡れたら風邪引きますよ!傘入って』

「じゃあお店の中入ってくれる?入らないと雨に濡れてやるから!」

『…。分かりました』



この人はずるいな…。

仕方ないので俺が折れて店内に入る