「まゆ〜もうすぐ私たち卒業だよ」
「そうだね……」
放課後、たわいもない会話からふとその話題になった。季節は冬、春になるにはあと2ヶ月となっていた。
「思い残すことないようにしないとね、まゆは何か思い残すことない??今やっとかないと後悔するかもよ??」
思い残すこと??
頭の中で中学3年間を思い出した。
友達にも恵まれて青春を謳歌したと思う。恋だってした。告白して振られたりその度に友達に慰めてもらって……
今になると全ていい思い出かもなんて思えてくる。
「思い残すことないかも……」
「そうなの??それならよかったけど……」
時計は5時半を指している。
私は何気なく窓の外をみた。
校庭は夕日に照らされ赤く染まり、グラウンドでは野球部が練習をしている。
「あれ??」
「どうしたの??」
「……いや、なんでもない」
本当になんでもないことだった。隣のクラスの人気者である岡崎 健介君が1人で帰っている姿を見ただけだった。
珍しいなって思っただけ
ただそれだけだった。
