襲ってきたカラスの出来事によってクラスは驚き、混乱していた。

 教室の一番後ろの窓際に集中して集まる視線。
 状況が飲み込めないまま異様な雰囲気だけが漂う。

 その一角で、気を失ったユキを抱きかかえるトイラが、本能丸出しに死守しようとして焼き付けるように睨み返している。

 何が起こっているのか理解しがたく、トイラの異常な気迫に誰もが畏怖して言葉を失っていた。
 
「落ち着け。ここは戦場じゃない」

 我を忘れているトイラに向かってキースが小声で発した。
 その直後、ころっと態度を変えて周りのものに話しだした。

「カラス、コワイ。ボクモ キゼツ シソウダッタ」

 キースの言葉を皮切りに次々とカラスの話題が飛び出し、みな口々に感想を述べ合ってクラスはざわざわとし始めた。

「春日は大丈夫なのか。トイラも怪我してるじゃないか」

 動揺しながら村上先生が問いかける。

 ユキはピクリとも動かず、トイラに抱きかかえられている。
 そのトイラの手もカラスに引っかかれた傷ができて血が出ていた。

「ホケンシツ ツレテイク」

 キースが言った。

「そ、そうか。じゃあ、頼んだ。みんなも落ち着くんだ。もう大丈夫だから」

 村上先生が収集をつけようと、みなに呼びかける。

 いつものようにホームルームが始まり、止まっていた時間が、何事もなかったように動きだした。

 トイラはユキを抱きかかえて教室を出て行く。
 その後をキースが続き、様子を窺っている生徒に向かって「ダイジョウブ ダイジョウブ」と連呼していた。